●貧困問題の解消を訴えるグローバルな市民キャンペーンGlobal Campaign Against Poverty(GCAP)
リプロダクティブ・ライツの実現を求めて活動する国際連帯ネットワーク
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平等実現のために ともに闘おう!
貧困に立ち向かおう!
Women’s Global
Network for Reproductive Rights(WGNRR)は、女性のReproductive and Sexual Health and Rights(性と生殖に関する健康と権利)の実現を目指して、「貧困問題の解消を訴えるグローバルな市民キャンペーンGlobal Campaign Against Poverty(GCAP)」と共闘することを呼びかけます。
●貧困の深刻化と女性のReproductive and Sexual Health and Rightsの悪化の悪循環を断つこと
貧困と女性のReproductive and Sexual Health and Rights (RSHR) の状況は、相互に補強しあうものです。その悪循環の中では、たとえば、女性たちがHIV/エイズをはじめとする性感染症にかかりやすい立場にいること、健康を保てず安全な妊娠中絶を受ける機会がないこと、女性が出産する子どもの数を自分で決定できず、高い母体罹病率にさらされること、このような状況ならば、女性たちの社会的、経済的機会はますます制限され、より深刻な貧困に陥ります。
男性と女性それぞれに割りあてられる役割のせいで、貧しい家庭では、女性たちは不平等な重荷を背負わされています。女性は貧困の負担のせいで教育や収入の機会から遠ざけられ、そのため、女性がReproductive and Sexual Health and Rightsを享受することも困難になります。
WGNRRとそのメンバーは、貧困撲滅を達成することが女性のReproductive and Sexual Health and Rightsの推進と強く絡み合っていることを多くの時間を費やして指摘してきました。昨年WGNRRでは、貧困と女性のSexual Healthの課題の双方の改善を目指して、国連のミレニアム開発目標(ミレニアム開発目標)に歩調を合わせるのかどうか、その場合はどのように関われるのかを議論し、方策を練ってきました。貧困削減を目指すGCAPイニシアティブは、女性がReproductive and Sexual Health and Rightsを享受できる効果的な条件を創出する重要な手段であると確認されました。
●ミレニアム開発目標(国連で合意した、貧困削減のために2015年までに達成すべき8つの基本目標)はどう機能するのか
私たちはミレニアム開発目標をより周知し、政府に説明責任を果たさせ、政府に公約を実現させてきました。このやり方はこれまで市民社会が採用してきた主な展開でもありました。国際的なレベルでは、女性団体は、ミレニアム開発目標を編み出して修正し、RSHRについて明確に言及して、もっとジェンダーに着目したターゲットや指標を開発するよう主張してきました。
ミレニアム開発目標
2000年、国連加盟189か国の世界の指導者たちは、2015年までに極端な貧困を根絶することを誓約した国連ミレニアム宣言を採択しました。そして2015年までに達成すべき次の8つのミレニアム開発目標が設けられました。
目標1:極度の貧困と飢餓の撲滅
目標2:初等教育の完全普及の達成
目標3:ジェンダー平等推進と女性の地位向上
目標4:乳幼児死亡率の削減
目標5:妊産婦の健康の改善
目標6:HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止
目標7:環境の持続可能性確保
目標8:開発のためのグローバルなパートナーシップの推進 (詳しくはwww.un.org/millenniumgoals)
●ミレニアム開発目標(2015年までの基本目標)の問題点
ミレニアム開発目標は世界の貧困について徹底的に分析することから逃げているという問題点があります。ミレニアム開発目標は、貧困の根本的な原因、例えばマクロ経済政策の枠組みや不平等な力関係について述べません。また、ミレニアム開発目標は世界化した新自由主義や保健・医療・教育などの民営化が、ミレニアム開発目標の達成を妨げていることを認めようとしていません。ミレニアム開発目標は、開発とは近代化と工業化の過程をたどるものと決めつけ、社会構造や政治を変革する必要性を考慮に入れません。実用面での問題としては、ミレニアム開発目標は貧困の定義として「1日1ドル未満」という議論の余地がある定義を利用しています。ミレニアム開発目標が貧困削減を掲げても、貧困の根絶までは触れていないことは重大な欠陥です。
また、ミレニアム開発目標は、ジェンダー(社会の中での男女概念)特有の課題への対応が不充分です。男女平等推進と女性の地位向上という目標3は、単に教育の上の課題のみを取り上げるのみで、sexual and reproductive rightsの保障など、その他の様々な分野での女性のエンパワーメント(もともともっている力を充分に活かすための力づけ)に取り組んでいません。妊産婦の健康の改善についての目標5も、HIV/エイズに関する目標6もsexual and reproductive rightsには触れていません。おおむね、ミレニアム開発目標は直接的に女性のRSHRに言及せず、国際人口開発会議(カイロ会議1994年)や第4回世界女性会議(北京会議1995年)でなされた幅広い国際的合意からもそれているともいえます。
現実の実践場面でも、いくつかの問題があります。農村地帯や都市スラムでの女性の草の根組織には、ミレニアム開発目標について学んで、活動の方法や目安として利用する機会がほとんどありません。地方の貧しい人たちこそがミレニアム開発目標による利益を受けるべきなのですが、農村地域に足を踏み入れて支援する中ではうまく伝わりません。農村の女性たちが積極的に参加するには、整備されていないものが多々あります。例えばインターネットが利用できる人々はごく限られており、使用できる言語にも障壁があるため情報伝達が妨げられています。それだけでなく女性たちの参加がきちんと重視されていることはめったにありません。
●それでも推薦したいこと
上記のような課題はありますが、ミレニアム開発目標は、政府に公約の責任を果たさせ、政府に具体的な行動を通して貧困に取り組むよう圧力をかけるための方法になりえます。
ミレニアム開発目標には達成までの期限が定められた具体的な指標が記載されており、幅広い支持が得られているからです。しかし注意深さも必要です。このミレニアム開発目標を社会に広め、役立たせるには、女性が今日直面する現実を熟考して適用される必要があります。
さらに、ミレニアム開発目標に取り組むことで、市民社会に拠点を置く組織や政府などとの間での分野を超えた開かれた対話の機会が生まれます。ミレニアム開発目標について話し合い、理解を広めるために、より包括的な内容を提供する扉が開かれる機会になるでしょう。
最後に、おろそかにできないのは、ミレニアム開発目標を利用して活動することで、草の根の活動団体が互いに結びつき、関連組織や今まで関連をもたなかったさまざまな団体とつながりやすくなることです。
ただし、ミレニアム開発目標を利用して広めてゆく取組みは、何もかも混合して、十把一絡げ的なものになるべきではありません。先に述べたミレニアム開発目標への批判は現実的なものであり、根本的なものであり、特別な注意が払われるべきです。WGNRRの立場からみると、sexual and reproductive rightsについて明確に描かれていないことは重大な欠陥です。貧困撲滅の成功の鍵は、女性がsexual and reproductive rightsを享受できるかどうかにかかっているからです。ミレニアム開発目標は、上述の全ての課題に適用されるべきです。ジェンダーの(社会の中での男女位置づけを見直す)視点はミレニアム開発目標の全ての歩みの段階で吟味されなければなりません。とくに目標3、5と6にはsexual and reproductive health and rightsを含む女性の基本的人権の保障についての明確な説明と着地点が定められるべきです。
ミレニアム開発目標は、すでに貧困と闘い、sexual and reproductive rightsの実現を支援するための活動に取って代わるものにはなりえません。せいぜい、ミレニアム開発目標には国際人口開発会議(ICPD)、北京会議、女性差別撤廃条約(CEDAW)などの過去の成果を補足する役割しかありません。
2015年までに成果を獲得していく歩みの中で草の根女性の活動がかかわり、達成のためのキャンペーンを豊かにするため、最低限sexual and reproductive rightsの課題について有効な発信と対話ができる場が必要です。
●資金調達
ミレニアム開発目標という枠組みは資金調達の枠も広げます。より効果的に資金調達するためにミレニアム開発目標へのドナー(資金・基金を出す人や団体)の関心を活用しましょう。地方の小さな活発な活動や地方の女性たちの参加だけで、ミレニアム開発目標が達成されることもあります。しかし、現実には最近の資金提供者は小組織やそのネットワークと共同作業をしたがりません。そして、貧困で苦しむ都市の女性向けのプロジェクトへの国際的な資金調達も困難です。WGNRRはあらためて、ドナーが小さな地元のグループにもっと関心を持ち、直接の支援するよう求めています。
●ミレニアム開発目標を地域化しましょう
ミレニアム開発目標の地域版を描いて、指標を増やしましょう。ミレニアム開発目標以前の国連合意で進展を図るために開発された確立された指標を活用するのです。また、目標と指標を国レベルで計算するのではなく、地域や村ごとで検証しましょう。地元の利害関係者と協力して現実的な目標に取り組んで、貧困削減と女性のreproductive and sexual health and rightsとのつながりを見えるようにするのです。
●あなたの立っている所や経験から離れないでください
政府のミレニアム開発目標への関心を、私たちの求めるRSHRの活動へのより多くの支持を得て、情報を広げるための広告の場を得るために活用できます。しかし、最高の展開は、草の根レベルで活動をどんどん進め、ミレニアム開発目標と直接結びつくことです。その際、もっぱらミレニアム開発目標にあわせて自分たちの組織を再構成してしまうと、それまでの経験や結びつきを失う危険もあり、注意すべきところです。
●政策に反映させる
政府が、ミレニアム開発目標についての公約を実現し、RSHRを計画と監視の中に包括的に盛り込むよう働きかけてください。その際、前述のGCAP(貧困問題の解消を訴えるグローバルな市民キャンペーン)と連携することが有効です。ただし、開発途上国などでは、政策に圧力をかけることが得策でないこともあります。そのような場合には他の展開を優先させることが賢明かもしれません。貧しい国に働きかけることには限界があります。
●若者
若者と取り組むことを始め、推進し、対応しましょう。ミレニアム開発目標とRSHRへの取り組みが成功するためには、私たちにとっての最大の財産である若者の参加が欠かせません。
●国際的な圧力
最も有望な展開は、債務帳消し、フェア・トレード(公平・公正な輸出入)と開発援助の拡大に向けて結集することです。これらは、開発途上国がミレニアム開発目標を実現するのを達成できるための前提条件です。(詳細は、www.wgnrr.orgでのGCAP 2005の報告書を参照)
GCAP(貧困問題の解消を訴えるグローバルな市民キャンペーン)世界の指導者にミレニアム開発目標を直視するよう働きかけること
2005年にブラジルのポルトアレグレ市で開催されたWorld Social Forum(世界社会フォーラム)の期間中に、「貧困問題の解消を訴えるグローバルな市民キャンペーン(GCAP)」が始動しました。GCAPは、貿易の公正、債務帳消し、開発援助の拡大に焦点を当てた、自律的な市民社会組織と社会運動です。GCAPは、幅広いメディアの関心を集めることに成功し、特にホワイト・バンド・デイではミレニアム開発目標を達成し、さらなる成果を実現するよう世界の指導者たちに圧力をかけるために世界中の活動体を大規模に集結しました。ホームページ、郵便、電子メールなどを通して、私たちはメンバーにGCAPについて知らせて、GCAPとホワイト・バンド・デイへの大規模な参加を呼びかけました。WGNRRのメンバーの多くはすでに自分の国でのGCAPの連合体に参加して、自身の国での集会や広報活動に積極的に参加しています。
●ホワイト・バンド・デイ
この期間中、世界中で何百万人もの人たちが、ホワイト・バンドを身につけます。このホワイト・バンドはこのキャンペーンの象徴ですが、連帯と貧困撲滅への願いを表します。最初のホワイト・バンド・デイは、スコットランドでのG8サミット会議の直前の2005年7月1日に実施されました。大規模な連帯コンサートが、インド、ガーナと英国で行われました。世界の指導者たちが取引の公正、債務の帳消し、援助の増加の分野での行動をとるべきであるという要求に世界的な注目を集めました。2回目のホワイト・バンド・デイは2005年9月のミレニアム開発目標の実行を点検する国連サミットの直前に組織されました。社会的平等をミレニアム開発目標に加え、ミレニアム開発目標の8つの全目標を通してreproductive and sexual health and rightsが含まれるべきだという明確な声明が発表されました。3回目のホワイト・バンド・デイは、公正な貿易に焦点を当て、2005年12月に香港でのWTOサミット直前に実施されました。
●WGNRRのGCAPへの関与
WGNRRは、全てのレベルでreproductive and sexual health and rightsを統合するよう求め、したがって幅広い連立を支持します。WGNRRは、reproductive and sexual health and rightsを実現するために効果的な状況をつくることを重視します。例えば、健康を含む公的サービスを充実させるための債務削減や、援助の際の融資条件の緩和や、債務免除や、フェア・トレードのようなGCAPの主要な課題を支持することは、GCAPとの自然な関わりを創ります。そうすることで、WGNRRはreproductive and sexual health and rightsを支持する活動が全体として最も効果的・効率的に成し遂げられると位置づけています。
WGNRRは、GCAPについての政策立案、計画実施、監視や評価にジェンダーの視点からの分析は不可欠であることを強調しています。同じことは、ミレニアム開発目標を広めていく際にも当てはまります。ミレニアム開発目標の進展を計るためにジェンダー(社会の男女区分け)を幅広く見通す力点が必要です。経済・社会政策が男性に比べて女性にどのような効果を及ぼしたのかを測定し監視するために、性別による内訳を明示したデータを利用することが必要です。また、どの分野でも抜かしてはならない主題として適切に対処されているか監視し評価するべきです。reproductive and sexual health and rightsに焦点を当てる組織は国レベルのGCAPの連盟とGCAPの政策過程に対等な発言力をもつべきです。
●現状
女性団体の強力な政策への働きかけのおかげで実現した、2005年のミレニアム開発目標についての国連サミットの成果文書は特に重要です。世界の指導者たちはその文書に社会的な男女平等を盛り込み、女性に対する暴力が処罰されずに放置されている状況に終止符を打ち、女性を差別する政策や実践を根絶することを約束しました。また、2015年までに全ての人がリプロダクティブ・ヘルスを総合的に利用できることを記したカイロ会議の行動計画を再確認しました。ミレニアム開発目標にリプロダクティブ・ヘルスの中心的位置を認めて、発展途上国で保健制度を改善するために投資を増やすことを誓いました。
しかし、ミレニアム開発目標にはsexual health(性的健康)やsexual or reproductive rights(性と生殖の自由の権利)についての記載がありませんでした。エイズの拡大については、男女別の側面や予防での対等性、治療や必要な世話でのセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスサービス(性と生殖についての健康サービス)との結びつきは、無視されました。
国家レベルでは、各国は国別にミレニアム開発計画を立てて、定期的にミレニアム開発目標達成への進行状況を報告する義務を約束しました。この約束により、女性団体が国家の中でこれらの計画を作成する際に政策提言するよい機会ができました。国の公式報告書を通した監視や非公式報告書のためのデータ(事実)収集も重要な役割を果たします。
GCAP国際促進グループは、昨年の活動を振り返り、レバノンのベイルートで、将来に向けて政策要求と計画のとりまとめを協議するために会合をしました。そこでは、2006年3月のGCAP ベイルートを基本合意として「平等実現のためにともに闘おう」を作成しました。「私たちは、ジェンダー(社会の中での男女区分)を平等にすることが貧困撲滅のための中心的課題として位置づけられることを求めます。私たちは、さらに、子ども、若者、女性や排除された集団の権利を擁護して後押しすることが、彼(女)たちに平等な参加を保障することになり、かつ、これらの目標達成のための根本であると位置づけることを求めます。」WGNRRは、その会合で会員として役割を果たし、行動を支持しています。GCAPのフェミニスト作業部会は社会の中での男女区分、貧困、不平等との関連を強調しています。
●将来に向けて
私たちは、昨年のプロジェクトの結果に基づいた決定方針を開始しました。参加者は共同的で、啓発的で、地理的レベルに関連した活動を描き続けてください。地域から世界へ、世界から地域へ。貧困撲滅の政策と啓発は、女性のRSHRを促進し保護することを目指してきました。この活動の流れと平行して、WGNRRは情報や分析を提供し、RSHRに取り組む草の根女性団体と手を組みます。債務、貿易、援助のような貧困撲滅に関連したテーマ、ミレニアム開発目標を地域レベルでのRSHRについての現実と必要なものにいかにして適用するか、など、そして、WGNRRはメンバーとサポーター(支援者や後援者)がGCAPの連盟やキャンペーンに参加し、GCAPの貧困撲滅の分析と行動の中で女性のRSHRを主流化することを期待します。
●どのようにかかわるか
WGNRRは、情報収集や、電子メールやホームページで情報や声明文を提供します。文書や情報はインターネットを通して利用できます(www.wgnrr.org)。
地域レベルでミレニアム開発目標を女性の現実と要求に適用するための方法を2007年のうちに作成する予定です。
国のGCAP連盟に参加しましょう。他の市民団体と連携を築き、あなたがたの体験と知識を分かちあい、女性のリプロダクティヴ・セクシュアル・ヘルス/ライツを重要課題の中に盛り込ませましょう。国のGCAP連盟に連絡するには、www.whiteband.orgを見てください。
あなた体験を共有し、質問をし、助言をするには、office@wgnrr.orgに連絡してください。
あなたが得た情報をWGNRRに伝えてください。WGNRRは、地域ごとのそれぞれの現実と必要にあったミレニアム開発目標を使いこなす方法を開発し、広める予定です。
私たちに、あなたの活動の結果を寄せてください。
●提供 WGNRR ●翻訳 すぺーすアライズ
発行 すぺーすアライズ(アライズ総合法律事務所内)nekoyanagi@mountain.ocn.ne.jp