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●周産期のHIV/AIDS感染について(WGNRR資料より)

 妊娠、分娩・出産や、授乳の時期に、HIV陽性の女性からその子にHIVウィルスが感染する可能性があります。このような感染は周産期感染と呼ばれています。HIVが感染することは、妊娠初期には可能性は低いのですが、妊娠後期に可能性が高くなります。妊娠・出産時期の女性のウィルス量が多ければ、妊娠中の感染の可能性は高まります。そして、栄養状態が悪いことや他の病気もあわせて感染(重感染)しているという要因によって、感染の可能性はさらに高まります。感染の可能性は分娩中も高くなります。子どもは、授乳時だけでなく、出産の際の体液に直接触れるのでHIVウィルスにさらされます。大部分は生後数ヶ月で起きますが、授乳によって子どもへのHIV感染の可能性が倍増することが知られています。

 

●事実とデータ

・ 2006年のデータでは3950万人の人が、HIV/エイズを抱えて生きています。そのうち、1770万人が女性で、230万人は子どもです。

・2006年末の時点で、女性の感染者は、世界中の成人HIV感染者の48%、サハラ砂漠以南のアフリカでは59%を、15-24歳の若者の感染者の中では62%を占めています。

・世界中の新規感染者の過半数は青少年です。

・HIVの検査を希望している人の12%しか、自発的なカウンセリングと検査(VCT)を利用できません。

・ウィルスの影響は、サハラ以南のアフリカで深刻なままです。世界人口の10%以上の人たちが暮らしていますが、HIV感染者の6割以上がこの地域の出身です。

・アフリカには1200万人ものエイズ遺児がいます。

・抗レトロウィルス治療を必要とする途上国の人のうち9割が利用できません。

・HIV/エイズの影響を被った家庭はそうでない家庭よりも貧しくなりがちであり、HIV/エイズによって家計は66から80%も減少します。

 

●概況 

 HIV感染者の圧倒的大多数の人たち、世界の約95%の人たちは、開発途上国に住んでいます。貧困に苦しみ、保健システムが不充分で、予防とケアのための社会資源が乏しいためにウィルスの感染拡大が起きている国では、その割合はさらに増大さえするでしょう。

 

●周産期のHIV感染

 HIV/エイズ感染が広がる経路の1つとして、出産を通してのものがあります。適切な対応がなされなければ、HIV陽性の女性から生まれるおよそ15-30%の赤ちゃんは、妊娠と出産の時期にHIVウィルスに感染します。さらに5-20%は授乳を通して感染します。

 

世界中で、毎年およそ220万人のHIV/エイズとともに生きている女性が出産をします。2005年末時点で、HIVに感染している子どもたち(15年未満で)が約230万人おり、そのほとんどは出生時にHIVに感染しました。2005年中に、主に母子感染を通して、およそ70万人の15歳未満の子どもたちがHIVに感染していました。これらの感染の約90%はアフリカで起きました。アフリカでは、子どもが生存率を着実に向上させてきた数十年の流れがあるにもかかわらず、エイズによって逆行が始まっています。高所得国での母子感染は、効果的な自発的なテストとカウンセリング、抗レトロウイルス療法、安全な分娩実践と母乳代替品普及と安全性向上のおかげでほとんどなくなりました。これらの医療が世界中どこででも利用できれば、毎年多くの子どもの命を救えます。

 

●女性にとってより大きな危険

大部分のHIV陽性の女性は、男性との性行為によって感染しました。女性は、膣の表皮面積が広いためHIVに感染した精液に触れやすいので、膣性交によって身体構造的に男性の2倍感染しやすいです。さらに女性たちは往々にして、このような身体的な特徴以外の理由のせいで、感染から身を守れないことがあります。たとえば、男性パートナーとの関係での女性側からのコントロールが欠如し(その結果として、セックスを断ったり、コンドームを使うことを求めたり、不特定のセックスパートナーとセックスしないように求めることができません。)、稼ぐ力が発揮できず(そのため医者や薬の購入にお金を使うことを禁止されます。)、家族の世話をする役割を求められる(そのため自分自身のことに時間を割くことができません。)ので、自分を感染から守りにくくなります。

 

●予防

母子感染を効果的に予防するには、将来両親になる人の間でのHIV感染を防止すること、HIV感染女性が望まない妊娠をすることを避けること、HIV感染女性から子どもへの、妊娠、出産、授乳中の感染を防ぐこと(これらは、主に抗レトロウィルス薬とより安全な育児実践により達成できます)という三つ戦略が不可欠です。

 

富の偏在は、出産の際のケアの主要な決定要素になっています。国内で、国を越えて、大きな格差があります。あらゆる地域では、専門技能者の立会う出産の割合は、都市部でより地方が低いのが現実です。妊産婦死亡率が非常に高い国では、裕福な20%の女性と最も貧しい20%の女性の専門技能者の立会いでの出産の格差は4倍以上に上ります。

専門技能者の立会いでの出産は、開発途上国全体としては1990から2003年の間に41から57%までと、かなり増えました。マレーシア、スリランカ、タイをはじめとする妊産婦死亡率の削減に成功した国では、その成功は助産婦の訓練と出生時の専門技能者へのアクセスへの重要な投資によるところが大きいです。これらの国では妊産婦死亡が7~10年の間に半減しました。しかし、サハラ以南のアフリカと西アジアでは、ごくわずかな変化しかありませんでした。

 

●抗レトロウィルス薬

●ネビラピン単回投与

陣痛が開始したときにその女性に、出生後の子どもに、ネビラピンを一回服用させることは、HIV感染率を約半分に抑えます。一服用分のネビラピンは比較的安くて、投与するのも容易です。ただし、ネビラピンが薬剤耐性を高めてしまう可能性があるので、その利用は代替治療が利用できないときに限られるべきです。しかし、残念なことに、ネビラピンは最小の医療資源しかない地域では唯一の実践的な選択肢にとどまっています。

ネビラピンの単回投与とアジドチミジン(AZT、核酸系逆転写酵素阻害剤)の組み合わせ

AZTとネビラピンの単回投与との組合せは、資源が限られた地域での母子感染予防として現在推奨されています。このアプローチはネビラピンの単回投与よりも管理が困難ですが、ネビラピンの単回投与よりも効果的であり、かつ薬剤耐性も生じにくいです。

●3剤併用

妊娠の後期や分娩時に抗レトロウィルス薬3剤併用は、最も効果的な治療方法です。3剤併用治療は通常先進諸国で推奨されており、その他の地域でも広がりつつあります。

 

●安全な授乳

HIVに感染している女性は、粉ミルクなどの母乳の代用品の利用がしやすく、実施可能であり、入手可能で、持続可能であり、安全であるという条件を満たすならば、必ず母乳を授乳しないよう勧められます。しかし、安全な水が利用できないならば、粉ミルクの利用によって命を脅かすことの危険が母乳による感染の危険よりも高いこともあります。また、粉ミルクの費用が、製品としては広く普及しているものの、低所得国の貧困家庭では手に届かないこともありうるでしょう。

HIVに感染した女性が母乳による授乳をする場合、代替手段としての粉ミルクが利用可能になるまで母乳のみを与えることが推奨されています。母乳と粉ミルクを混合して与えることは、子どもの胃腸の内壁に損傷を与えるためかえって子どもがHIVに感染しやすくなってしまうため、母乳だけ授乳する場合より危険性が高いです。毎日のビタミンA以外の総合ビタミン剤を服用している女性は、授乳によるHIV感染の危険性を減らすことができます。

 

●帝王切開

女性のHIVウィルスの血中濃度が高いならば、帝王切開による分娩はひとつの解決方法として推奨されます。帝王切開による分娩によって、女性の血液やその他体液が直接子どもと接触することを避けることができます。しかし、資源が限られている環境では、多くの場合帝王切開は利用しにくかったり、安全でないです。

 

●Sexual & Reproductive Healthとエイズの流行状況

エイズの流行状況は、Sexual & Reproductive Healthと密接にかかわっています。つまり、HIV感染の圧倒的大多数は、性行為によって感染するか、妊娠・出産・授乳に関連するものです。HIV/エイズとSexual & Reproductive Healthの根源も、貧困、ジェンダー不平等、社会的脆弱性が高い人が社会の中心からはじき出されていることであり、共通しています。HIV/エイズとSexual & Reproductive Healthの課題に別々に取り組むことは、双方に効果的に取り組む努力を台無しにしてしまいます。Sexual & Reproductive HealthとHIV/エイズプログラムの結合からもたらされる一般的な効果としては次のようなことがあげられます。

鍵となるサービスへのアクセスし、取り組むことを改善する

HIVに感染している人たちが必要としているサービスによりアクセスできるようになる

HIV/エイズにまつわるスティグマや差別を減じる

充分なサービスを受けられず、周縁化された人たちの割合を改善する

ニーズが高い人たち、特に若い人たちが望まない妊娠、HIVを含む性感染症二重防御を利用できるよう大きく支持する

ケアの質を向上させる

プログラムの効率と効果を高める

sexual and reproductive healthケアへのアクセスが制限されている環境ならば、より包括的なサービスが適している。人まとまりで最小限のサービスのパッケージを提供することは、おそらく貧しい人たちの差し迫ったニーズを満たし、健康の権利を保護するための最高の方法になるでしょう。

 

性及び生殖に関する健康が保たれていないことは、出産が可能な女性の疾病の負担の3分の1を占めています。たとえば、

妊娠・に関連する合併症、HIVや生殖器のガンを含む性感染症などです。

 

●エイズとの闘いとミレニアム開発目標

2015年までにsexual and reproductive healthサービスへの普遍的アクセスを実現するという目標は、多くのミレニアム開発目標実現のための基本となります。性及び生殖に関する健康についての教育、情報とサービスへの普遍的アクセスは、健康を増進して、命を救い、貧困を減らします。

 

ミレニアム開発目標の目標6、ターゲット7はHIV/エイズの蔓延を2015年までに食い止め、その後減少させるとしていますが、その実現のためには次のことが必要です。

 プライマリー・ヘルス・ケアを通して2015年までに全ての人にとってのSRHサービスへの普遍的アクセスを保障すること

 プライマリー・ヘルス・ケア・システムのキャパシティを構築し、強化すること

法律、政策、プログラムの中で、SRHとHIV/AIDS対策の連携を強化すること

 避妊薬(具)を含むSRH機材の安全な供給を保障すること

 SRH教育を学校のカリキュラムの一部とし、学校に通っていない若者にも利用できるようにすること

 SRHに関するサービス、情報及び教育についての予算とドナーの資金拠出額を増加させること

 

●今必要なことは何か。

 各政府は、ミレニアム開発目標を実現するための手段を履行しなければならない。

 高所得国は、貿易の公正、低所得国の債務の帳消し、援助における新自由主義的な条件付けをやめ、援助額を増額させる必要があります。特に、HIV/エイズについての適切な対応をするために世界的に必要とされる毎年120億ドルの拠出を実現させる必要があります。

 SRHサービスは、全ての女性に対する予防、ケア、治療を含めてHIV/AIDSについてのサービスを統合しなければなりません。ほとんどの女性、特に資源が乏しい国の女性は、妊娠中のみしかHIV検査やケア・サービスを利用できません。そのため、妊娠していない女性は、適切なヘルス・ケアから排除されています。

自発的な検査と検査の前後のカウンセリングSRHサービスにも含まれなければなりません。それはどんな予防プログラムでの基本的要素だからであり、秘密の厳守やプライバシーの保護は、拒絶やスティグマを回避するため不可欠です。

 HIVに感染した人が自分が感染していると公表することを避け、彼(女)らが受ける偏見を減らすための対策や法律が必要です。

HIV感染と予防は、学校での性教育プログラムに含まれるべきであり、コンドームの利用をより多く促進し供給することが必要です。

 

Sources: UNAIDS, WHO, AVERT, CDC, UNFPA, WGNRR, UNICEF, UN Millennium Project

Prepared by: Carolien Ceton for WGNRR  すぺーすアライズ仮訳